なぜドイツの芸術大学で学ぶと良い?
日本の芸術・美術系学生にとって、留学を決めることは、新しい「視覚言語」を探す旅でもあります。ドイツが今でも主要の留学先であり続けられるのは、日独のあいだに、何世紀にもわたる深い芸術的対話があるからです。そのつながりは明治期にさかのぼり、先駆者たちが西洋写実主義を東京へ持ち帰ったことに始まりました。そして今日では、ドイツのアトリエで創作の核を見出した奈良美智(Yoshitomo Nara)や 塩田千春(Chiharu Shiota)といったスーパースターの世界的成功を通して、その対話は今も続いています。
豊かな歴史だけでなく、ドイツには他に類を見ない制度的なメリットがあります。それが、学費無料の教育システムです。ドイツの、世界的に評価の高い多くの芸術大学は公立機関であり、入学は経済的な背景に関係なく、純粋にご自身の創造性やポテンシャルによって受け入れられます。実験的で刺激に満ちたベルリンのストリートから、ミュンヘンのハイエンドな工房まで、ドイツはアーティストにとって「失敗する自由」を提供してくれます。これは試行錯誤を重ね、やがて国際舞台を圧巻するために、アーティストに不可欠な快適な空間となるのです。
Meisterklasse / マイスタークラス
ドイツの芸術教育における最大の魅力とも言えるのが、独自のマイスタークラス(Meisterklasse)制度です。一般的な大学のように学士号や修士号を取得する仕組みとは異なり、大講義室の大人数の学生の中の一人として扱われるのではなく、ドイツの芸術大学では教授と弟子の関係が重視されます。入学すると通常、世界的に活躍するアーティストである教授が率いる特定の「クラス」に所属することになります。単に授業を受けるのではなく、仲間とスタジオを共有しながら、教授から直接指導を受けるのが特徴です。
この制度の集大成が、名誉あるマイスターシューラー(Meisterschüler)という称号です。これは特に優秀な学生に与えられ、さらに1年間、集中的にスタジオ制作に取り組む機会が与えられます。この没頭型の環境は、実際のプロの芸術業界そのものを再現しており、強いコミュニティ意識を育むと同時に、ギャラリーやキュレーターとの直接的なつながりを築く架け橋となります。ドイツのマイスタークラスにおける学びは、単なる試験の積み重ねではなく、現代の第一線で活躍するアーティストとともに、自身の芸術的な個性を確立していく旅なのです。
ドイツの芸術大学トップ5
Universität der Künste Berlin (UdK Berlin) / ベルリン芸術大学
ヨーロッパ最大の芸術大学であるUdKは、創造性にあふれる巨大な拠点です。単なる学校ではなく、ベルリンの文化を動かすエンジンのような存在です。その評価を支えているのは「学際的な自由」であり、画家が作曲家やファッションデザイナーとコラボレーションすることも珍しくありません。さらに、世界有数の現代アートの中心地に位置しているため、学生は卒業前からプロのギャラリー業界に関わる機会を得ることが多いのも特徴です。
UdKは長年にわたり、世界中から才能ある人材を惹きつけてきました。世界的に著名な日本人女性アーティストの一人である塩田千春(Chiharu Shiota)は、没入型の大規模な糸のインスタレーション作品で知られています。また、日本人の著名な卒業生としては、東洋と西洋の風景表現を融合させた幻想的な絵画や彫刻で知られるイケムラレイコ(Leiko Ikemura)も挙げられます。その他の、UdK出身の世界的なアーティストには、画家のゲオルク・バゼリッツ(Georg Baselitz)、彫刻家のイザ・ゲンツケン(Isa Genzken)、そして革新的な振付家ピナ・バウシュ(Pina Bausch)などがいます。
Städelschule / シュテーデルシューレ
シュテーデルシューレ(Städelschule)は、ドイツで最も選抜性が高く、国際色豊かな芸術大学の一つと言えます。世界的に有名なシュテーデル美術館(Städel Museum)と物理的にも知的にも結びついた、独立した「自由国家」のような存在として独自の立ち位置を築いています。学生数はわずか約200人と非常に少なく、合格率も極めて低いですが、その分、世界の最前線のアートシーンへと直接つながる機会が得られます。この学校は「カリキュラムなし(No-Curriculum)」のアプローチで知られており、厳しい講評を通じて学生自身が自らの芸術的な表現を見つけ出すことを求められます。
その卒業生リストは、まさにヴェネチア・ビエンナーレを代表するアーティストの名簿とも言えるほどです。著名な卒業生には、2017年にGolden Lion賞を受賞したアンネ・イムホフ(Anne Imhof)や、トマス・サラセーノ(Tomás Saraceno)がいます。日本人では、長坂有紀(Aki Nagasaka)や北川康明(Yasuaki Kitagawa)といったアーティストが名高いマイスターシューラー(Meisterschüler)プログラムから輩出されています。また、毎年開催される「ルントガング(Rundgang / 年次展示)」は非常に有名で、世界中からコレクターやキュレーターが訪れる一大イベントとなっています。
Kunstakademie Düsseldorf / デュッセルドルフ美術アカデミー
絵画や写真の歴史に興味があるなら、デュッセルドルフはまさに「聖地」とも言える場所です。1960〜70年代にはヨーロッパのアート界の中心地であり、写真の見方そのものを変えた「デュッセルドルフ写真派(Düsseldorf School of Photography)」の本拠地でもあります。このアカデミーは非常に伝統的な体制を維持しており、学生は特定の教授に選ばれ、その「クラス」に所属して修学期間を過ごします。
この学校は日本とのつながりも非常に深く、最も有名な日本人アーティストとして挙げられるのが奈良美智(Yoshitomo Nara)です。彼の「怒った子ども」をモチーフにした作品は、世界的なポップカルチャーのアイコンとなっています。彼は1980年代後半にA.R.ペンク(A.R. Penck)のもとで学びました。そのほか、日本人の著名な卒業生には竹岡雄二(Yūji Takeoka)や村瀬恭子(Kyōko Murase)がいます。さらに、ゲルハルト・リヒター(Gerhard Richter)、ヨーゼフ・ボイス(Joseph Beuys)、ジグマー・ポルケ(Sigmar Polke)といったドイツの伝説的アーティストたちと並ぶ系譜に名を連ねています。
Bauhaus-Universität Weimar / バウハウス大学ヴァイマー
アート、建築、デザインの交差する領域に関心があるなら、ここはまさにモダニズムのスピリチュアルな故郷です。実験的なデザインとプロジェクトベースの学習に強く重点が置かれています。
オリジナルのバウハウス(Bauhaus)は1933年にナチスによって閉鎖されましたが、バウハウス大学ヴァイマー(Bauhaus-Universität Weimar)はその精神を受け継いでいます。この大学は、アートを社会的な機能という視点から捉える人にとって最適な選択肢です。つまり、デザイン、メディア、建築がどのように人々の生活をより良くできるかを考えます。特に「プロジェクト・スタディ」に力を入れており、学生は実験的なテクノロジーやミニマリストな美学を用いて、現実世界の課題に取り組みます。
歴史的に見ても、バウハウスは日本のモダニズムに大きな影響を与えました。1930年代には、山脇巌と山脇道子といった日本人学生がドイツに渡り、建築や織物を学びました。彼らは帰国後、「バウハウス様式(Bauhaus style)」を日本に持ち帰り、東京の建築から日本のグラフィックデザインに至るまで幅広い分野に影響を与えました。現在でも、デジタルメディアとファインアートの融合に関心を持つ日本人学生にとって、最高の進学先であり続けています。
Academy of Fine Arts Munich (AdBK) / ミュンヘン美術院
1808年に設立されたAdBKは、伝統と現代が融合する学び舎です。宮殿のようなルネサンス様式の美しい建物に校舎を構え、ドイツ最古級のアカデミーとしての格式を体現しています。特に高度な工房設備で知られており、大規模なブロンズ彫刻の鋳造や、最先端のセラミック技術を用いた制作をプロレベルで学びたい人なら、AdBKを検討しましょう。
19世紀後半から20世紀初頭にかけて、ミュンヘンは西洋画(洋画)を学ぶ日本人芸術家にとって主要な留学先でした。その代表的な人物が、明治時代の先駆者である原田直次郎です。彼はガブリエル・フォン・マックス(Gabriel von Max)のもとで学び、ドイツのアカデミック・リアリズムを日本に持ち帰りました。さらに近代においては、ワシリー・カンディンスキー(Wassily Kandinsky)やパウル・クレー(Paul Klee)といった巨匠たちもここで学び、その後バウハウスで教えることになります。
美術大学への出願方法
ドイツの多くの大学プログラムでは、日本の共通テストの受験、もしくは日本の大学で少なくとも1年間学んでいることが求められます(一般的な出願要件についての説明はこちら)。しかし、芸術系のプログラムは例外であり、これらの条件を満たしていなくても進学することが可能です。
美術の選考プロセス ”Kunst-Eignungsprüfung”とは?
代わりに、すべての出願者は入学試験(選考プロセス)を通過する必要があり、合否は高校の成績や共通テストの結果ではなく、この入学試験によって判断されます。
大学によって選考プロセスは異なりますが、一般的には以下の2つの要素で構成されています。
- ポートフォリオ(Mappenprüfung) ポートフォリオには自身の作品を複数からなり、自身の芸術的な才能を示す必要があります。芸術大学は必ずしも技術的な完成度の高さだけを求めているわけではなく、作品を通して独自の表現や個性(アーティスティック・シグネチャー)が感じられるかどうかを見ています。
- 面接(Mündliche Eignungsprüfung) 面接では主に提出した作品についてや、その芸術プログラムを志望する動機などが問われます。
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